2012年11月07日

CAN-AM LOLA RACINGMASTER Mk.1 (1980)

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 TAMIYAのRACING MASTERシリーズ第1弾、「CAN-AM LOLA」です。
 「動くプラモデル」のイメージが残っていた従来のTAMIYA製品とは一線を画し、AYKなどにも対抗できる純レース仕様のマシンを目指したものとして当時鳴り物入りで発表されました。
 豪華な装備と独特の配色でアダルトな雰囲気を醸し出す車体に、特徴的な形状のポリカーボネイト製ボディを搭載した本車は、26000円という国産らしからぬ高価格も相まって、現在に至るまでなおマニア憧れの存在として語られています。

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 もっとも冷静に見れば、各所に散りばめられた様々な工夫やこだわりはそもそも走行性能を劇的に向上させるような性質のものではなく、他方で最も重要な要素といえる重量に対する配慮は徹底されてはいませんでした。結果として非常に重たい車となってしまった本車は、当初の期待に反しレースシーンの第一線で活躍することは少なかったようで、某雑誌などでは発売後それほど時間が経っていない段階で早々に「大衆車」とのレッテルを貼られています。
 因みにあくまでノーマル状態での話ではありますが、車体重量だけでも当時ライバルになると目されていたAYKの「RX3000」に比べ本車は150g以上重いです。そして7.2V使用時には、プラスチックケースで覆われた所謂ラクダ形バッテリーと受信機用電源を搭載するために、重量の差もさらに大きなものとなりました。


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 装飾品のような複雑な曲線でカットされたFRPシャーシ。メカプレートの無いワンピース形で、バッテリーは縦置きで搭載します。
 フロント部分は、まるで後の3Pサスペンション・カーのリアのように大きく可動する形状にカットされ、そしてこの部分をローリング・スタビライザーで制御するというRX3000にも似た仕組みをとっていました。

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 フロントはキングピン・アングルが付いており、ナックルアームを回転させることでキャスターとキャンバーを同時に調整する構造です。
 また、サーボセイバーの取付け位置を前後に移動でき、これによりアッカーマンの調節が可能となっています。
 信頼性の高いボールアジャスターによるリンケージも、TAMIYAの従来の1/12マシンにはなかったものです。

 なおキングピンの軸受け、及びサーボセイバーの軸受けに、オプションのベアリングが合計6個追加できました。この場合キット標準のものと合わせると、装着されるベアリングの総数は16個にも上ることになります。

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 赤いエンドベルで知られるTAMIYA初のチューンド・モーター「BLACK MOTOR」を搭載。
 モーター・マウントとギア・ケースは高価なマグネシウム製であり、他にも各所にナイロン樹脂製パーツやアルミビスを多用している点などを鑑みれば、重量軽減に対する一定の努力は窺えます。

 スピードコントローラーは巻線にマイクロスイッチを併用する大掛かりなもの。最高速が指示された時にはマイクロスイッチが入り、モーターとバッテリーが直結される仕組みでした。また上級者向けモデルということでバック機能は省略されています。このスピードコントローラー部分だけで約80gの重量があります。

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 ギアはデフ・ギア(写真上)とダイレクト・ギア(写真下)が選択できましたが、両者には46gの重量差があります。デフ内部に重い金属材料で出来たギアやベアリングが多用されたためです。
 このデフはリミテッド・スリップ・デフ(LSD)と呼ばれる方式のもので、高速コーナーやギャップ面において駆動力が失われることがあるというギアタイプ・デフの欠点の解消を図ったものだそうです。すなわちデフ本体が高速回転した場合には、遠心力によってプラネタリー・ギアがギア・ケースに押し付けられてロックされるという仕組みでした。どの範囲をもって高速回転と言うのか分かりませんが、プラネタリー・ギアの移動量やギアケースとの摩擦力なども含めて定量的・総合的に評価のうえ設計されていたのでしょうか?また、実際の効果のほどは如何だったのでしょうか?

 シャフトには強度確保のためTAMIYAとしては初めて6mm径を採用、ただこれも重量面ではそれなりの負担となったのではないでしょうか。ちなみにずっと後の時代、おそらく90年代にTAMIYAから発売されたF-1シリーズ用のカーボンシャフトが、本車にも無改造で使用できます。
posted by NNC at 00:00| Comment(3) | TAMIYA
この記事へのコメント
偶々ネットで、昔のラジコンを検索したら、発見しました。
カンナムローラ、今も持ってます。
確かにコメントの通り、重々しく、コーナーは不得意でしたが、
モーター+スピコンのおかげで、最高速のマイクロswがオンしたときの速さは、
当時の他社モデルに引けをとりません。

今でもタイヤさえ代えれば、まだ走ります。
スポンジタイヤは、古くなると割れるので。

今後も色々と紹介してください。
Posted by テリー at 2017年12月27日 22:40
>テリーさん

カンナムローラの走行性能に関するご紹介ありがとうございます。
他社モデルに対抗するべく当時のユーザーがどんなデベロップメントを行なっていたのかは非常に興味深いところです。
Posted by NNC at 2018年08月28日 00:34
フロントバンパーがシャーシではなく
フロントサスメンバーにつけられていてこのメンバーが割れてしまうのですが
タミヤではスペアパーツとして売ってくれませんでした
みんな他社のフロントアクスルに変えてレースをしていたのでキングピンアングルってなに?って状態でした
Posted by kossy at 2020年09月15日 16:15
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